ファスティング中は「とにかく安静に」と思っていませんか。確かに、激しい運動は禁物です。でも、穏やかなヨガまで止めてしまうのは、実はとてももったいない。15年間ヨガを教え、自身も年に数回のファスティングを続けてきた立場から、この2つを組み合わせる理由を、できるだけ分かりやすくお伝えします。
「断食中に動いていいの?」
いちばん多い質問
カウンセリングで最もよく聞かれる質問が、これです。「ファスティング中って、運動してもいいんですか?」
答えはシンプルで、「運動の種類による」です。
ランニングや筋トレのような高強度の運動は、ファスティング中は避けるべきです。固形物を摂っていない状態で心拍数を上げると、低血糖やめまい、筋肉の分解(カタボリック)を招くリスクがあります。
一方で、深い呼吸を伴うゆるやかなヨガは、ファスティングとまったく異なるメカニズムで身体に働きかけます。心拍数を上げるのではなく、自律神経のバランスを整え、内臓の動きを促し、リンパの流れを助ける。だからこそ、ファスティング中にこそ意味がある動きなのです。
呼吸法(プラーナーヤーマ)
座位・仰向けのストレッチ
ねじりのポーズ
キャット&カウ
チャイルドポーズ
15〜30分の散歩
ランニング・HIIT
ウェイトトレーニング
ホットヨガ
パワーヨガ
長時間の有酸素運動
逆転ポーズの長時間キープ
理由①
自律神経の「切り替え」を助ける
ファスティングを始めると、身体は普段と異なる状態に置かれます。食事という日常的な行為がなくなることで、交感神経が優位になりやすく、「なんとなく落ち着かない」「眠りが浅い」と感じる方が少なくありません。特にファスティング初日〜2日目にかけて、この傾向は強くなります。
ヨガの深い呼吸、とりわけ吐く息を長くする呼吸法は、副交感神経を活性化させる効果が確認されています。交感神経の緊張をやわらげ、身体を「修復モード」へと導いてくれる。ファスティング中の不安定な自律神経バランスを、呼吸ひとつで補正できるのです。
吸う息を4カウント、吐く息を8カウントで行う「1:2呼吸」を試してみてください。5分間続けるだけで、心拍が穏やかになり、気持ちが落ち着くのを実感できるはずです。ファスティング中でなくても、寝る前や緊張する場面で使える一生もののテクニックです。
理由②
内臓を「やさしく動かす」効果
ファスティング中、消化器官は「お休み」しています。でも、完全に動きを止めているわけではありません。身体は断食中も、古い細胞の分解(オートファジー)、老廃物の排出、腸内環境のリセットを静かに進めています。
ヨガのねじりのポーズは、このプロセスを後押しします。体幹をねじることで腹部に穏やかな圧がかかり、腸の蠕動運動が促されます。いわば、外側から内臓にやさしくマッサージをかけるようなものです。
私自身、ファスティング2日目の朝にねじりのポーズをすると、お腹がぐるぐると動き出すのを毎回のように感じます。消化器官が「ちゃんと働いているよ」と教えてくれるような、不思議な安心感があります。
理由③
リンパの流れは、
動かさないと止まる
血液は心臓がポンプとなって全身を循環しますが、リンパ液には心臓のようなポンプがありません。リンパは筋肉の動きと呼吸によってのみ流れるという特性があります。
ファスティング中に安静にしすぎると、リンパの流れが滞り、むくみや倦怠感の原因になることがあります。せっかくファスティングでデトックスを促しているのに、排出の「通り道」が渋滞してしまっては本末転倒です。
ヨガの動きは、まさにこのリンパの流れを助けるために設計されているかのようです。腕を上げ、体側を伸ばし、脚を動かす。大きなリンパ節がある脇の下・鼠径部・首まわりを自然とストレッチする動きが、ヨガのアーサナには組み込まれています。
理由④
「何もしない不安」を手放せる
これは科学的な話ではなく、心理的な話です。でも、とても大事なことです。
ファスティング中、食事がなくなった時間に何をすればいいか分からない、という声をよく聞きます。私たちは想像以上に、食事を中心に一日のリズムを組み立てています。それがなくなると、時間を持て余し、空腹が余計に意識されてしまう。
朝と夕方にヨガの時間を設けることで、断食中の一日に「心地よいリズム」が生まれます。マットの上で呼吸に集中している間は、空腹を忘れているという方がほとんどです。食事に代わる「身体との対話の時間」として、ヨガは精神的な安定剤のような役割を果たしてくれます。
ファスティングの段階別、
ヨガの取り入れ方
ファスティングは準備食・断食・回復食の3段階で進みます。それぞれの段階で、身体の状態が違います。ヨガの内容も、それに合わせて変える必要があります。
ふだん通りのヨガでOK
まだ固形食を摂っている期間なので、普段の練習をそのまま続けて構いません。ただし、激しいパワーヨガやホットヨガは控えめに。身体を「静かなモード」へ移行させていくイメージで、呼吸を深めることを意識してください。
座位と呼吸法を中心に
身体がまだ断食に慣れていないため、立位のポーズは最小限に。座った姿勢でのねじりと前屈、仰向けでのストレッチを15〜20分。頭がぼんやりする場合は、呼吸法だけでも十分です。
身体が落ち着いてくる頃
多くの方が「意外と平気」と感じ始めるタイミング。キャット&カウで背骨を動かし、やさしいねじりで腹部を刺激しましょう。立位で行うなら、木のポーズ(ヴリクシャーサナ)程度の穏やかなものを。時間は20〜30分まで。
静かなエネルギーを感じる日
ケトーシス(脂質代謝モード)に入り、頭がクリアになる方が多い日。身体は軽いですが、過信は禁物です。ゆったりとしたフロー(太陽礼拝のスローバージョン)を楽しめる一方、長時間の練習やバランスポーズの長いキープは避けてください。
最も慎重に
実は、断食中より回復食期間のほうが身体は繊細です。消化器官がゆっくり再起動する時期なので、ねじりの強度は控えめに。仰向けのポーズと呼吸法を中心に、身体が食事を受け入れる準備をやさしくサポートしましょう。
「効果を最大化する」のではなく、
「安心して過ごす」ために
ここまで読んで、「ファスティングの効果を最大化するためにヨガが必要なんだ」と感じた方もいるかもしれません。間違ってはいませんが、私が本当に伝えたいのは少し違います。
ファスティングは、身体にとって非日常です。普段の生活からエネルギー源を一時的に断つわけですから、不安を感じるのは当然のこと。その3日間を、ただ耐え忍ぶのではなく、「自分の身体と静かに向き合う時間」に変えてくれるもの。それが、私にとってのヨガの役割です。
マットの上で呼吸を整えていると、空腹すら「身体が今、リセットしているサイン」に感じられます。辛いものが、穏やかなものに変わる。その体験があるからこそ、ファスティングを「もう一度やりたい」と思えるのだと、カウンセリングを通じて何度も感じてきました。
ファスティングの3日間は、
何もしない3日間ではなく、
身体の声を聴く3日間。
ヨガは、その声を大きくしてくれる。 — Kasumi
ファスティング中のヨガは、必ず自分の体調と相談しながら行ってください。めまい、強い倦怠感、動悸を感じた場合は、すぐにポーズを中断し、横になって休みましょう。持病をお持ちの方、服薬中の方は、ファスティング自体を始める前に主治医にご相談ください。
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